オファーレター




僕がまだ若く傷きやすかった年の頃、父がある忠告を与えてくれたのだけれど、爾来ぼくは、その忠告を心の中でくりかえし反芻してきた。

「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするのだ。誰もが、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだと」

The Great Gatsby, by F. Scott Fitzgerald

気取ってはみるものの、少し物悲しいのはこれまでの徒労を省みてしまうからでしょうか。時間の無駄とは思わないけど、ふと我に返った気が致します。やっぱ人生=ゲームではないよね。

そんなこんなで先日オファーレターを提示していただき、その場でサインしました。今後について聞かれたけど、さすがに「全部落ちたらここにします」ってのは失礼なので、「もう少し、他の業界も回ってみたいと思います」という模範解答。この後時間があるか聞かれて、食事を奢ってくれるのかと一瞬期待したんだけど固辞。考えてみれば、ここでズブズブいくのはかっこ悪いなと。それに学会発表すぐだし。てことでスーツを脱ぎに一旦帰って、そのまま研究室に泊り込みという院生の鏡。研究室のメンツにばれることなくにここまで来れたのは評価に値すると思うけどどうだろう。

ところで、僕自身興味津々だったオファーレターですが

上等な羊皮紙にしたためられたそれは、幽かに芳ばしいインクの香りを漂わせながら目の前のデスクに置かれていた。流れるような筆記体に僕は目を奪われた。もはやその内容を吟味することも忘れ、ただただ見惚れるばかりである。…どれだけの時が経ったのだろうか、気がつくと僕一人きりで、先ほどまで一緒にいた秘書の女性が見当たらない。慌てて部屋を見渡すが、彼女はどこかへ行ってしまったようだった。かわりに応接室の重厚で気品溢れる調度品に今更気づき、それ程舞い上がっていたのかと恥ずかしくなった。しばらくの後、温かい紅茶を用意した彼女が再び部屋へ戻ってくる頃には僕の気持ちも大方落ち着いており…

このあと官能小説風の展開を用意していたんだけどやめた。結局、ここまでの内容を3行にまとめると

  • キレイな紙に
  • 年棒とかが書いてあって
  • とりあえずサインした

これだけ。あんまり感動しなかった。冒頭にも書いたけど、自分恵まれてるなと感じながらもそれって僕自身の努力とはぜんぜん関係ないところで獲得したんだよな、とか思ったり。選考の最中とかも、心の中で毒づいたり、時々口に出してディスったりしたけど、今思うと遊びでこんなことやるべきじゃなかったなと反省したり。…なんて殊勝な気持ちにはならず、内定後の手続きを説明する社員を観察したり。とにかく不毛だった。気分的には正に「グレート・ギャツビー」的であった訳で、ニックがラストで吐く台詞をそのまま都会のど真ん中で叫んでやりたい衝動に駆られた。

やっぱ酒飲んでると書きたいことがまとまらないけど、なんとなくお分かりいただけただろうか。もし明日自分で読み返して意味が分からなかったら書き直すわ。


華麗なるギャツビ- (角川文庫)

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