経済と命にトレードオフなんか全くない という記事



ネットサーフィンしてたら「経済と命にトレードオフなんて全くない」という記事を見つけたので読んでみました。さして興味を持ったわけではないんです。だって、直感的にトレードオフなんてないだろと。豊かならそのぶん寿命は延びるだろうと。なので、この人は何と戦ってるんだろうな、なんて考えて読むことにしたわけです。


(略)様々な医学的研究で、同じ国の中でも、金持ちの方が貧乏人よりも健康で長生きすることが確かめられている。個人レベルでも経済力が強いほど、自分や自分の家族の命を守れる。

国も個人も、もっと豊かになること、経済成長させること、そしてもっと金を稼ぐことに肯定的になるべきだ。そのために国は政策を考えなければいけない。エネルギーを消費しなくても豊かな生活を送る、経済成長せずとも豊かな社会を目指す、などということは偽りに過ぎない。

最後はこんな感じで結ばれています。とりあえず経済成長は大事だとおっしゃりたいわけですかね?それは賛成。とりあえずやれることはやろうぜ。豊かさは相対的なもんだろうから、とりあえず先進国レベルの国力は保とうよ。でもね、この記事もの凄く短くて何だか雑。正直僕のブログとレベル変わんないんじゃね?みたいな。特にこの図かな。

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上の図を見てもらえばわかるように、一人当たりのGDPと平均寿命とは極めてはっきりした正の相関がある。その他、乳幼児死亡率などさまざまな項目が一人当たりのGDPの増加とともに改善することが示されている。要するに、経済が強く多くの命を守れる国と、経済が弱く国民の命を守れない国のふたつしかないのだ。

いやまあ、言いたいことはわかるんですけどね。なんか「はっきりとした正の相関」って言われると、じゃあ相関係数は?ってなっちゃうんだよね。線形近似してるけど結構外れ値とかあるし。しかもさ、よく読むとこれ横軸が片対数じゃん。ってことは対数近似なのか。とすると今回議論している日本のような先進国じゃ弱い相関しかないってことでは。人間の寿命には上限(少なくとも現代の医療技術レベルによる制約)があるわけだから、筆者の主張を逆に弱めてしまうと思うのだけど。それにさ、このデータってどうせ香港とか、ちょっと前のものならアイスランドとか入ってるわけでしょ。あの辺とアメリカが同じウエイトってのもこの図の信頼性を眉唾ものにするよね。しかもそのアメリカが結構な外れ値になってたりしそうだし。この辺も含めあえて説明を避けたのなら悪質じゃねーかと思うんだよね。

結局、人の記事にいちゃもんつけただけなんだけど、なんか世の中に氾濫してるグラフって考えさせられちゃうよね。特にエクセルだと簡単に近似式とか作れちゃうから、そのへんの性質全然知らなくもポンと表に出しちゃう。この間TAで学部生のレポート採点してたら、サンプル数N=3で相関係数併記してドヤってなってるやつ見つけて、もうホントに日本という国が信じられなくなりました。まあレポートなんてまともに見られてないと思って舐めてたんだと思うけど、一応採点してる人はいるんですよ。東大生ェ…

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