就活がぶっこわれると困る人たち



出かける前に軽く考えてみようと思った。ここでは「就活をぶっこわす=新卒一括採用を見直す=通年採用・既卒採用の一般化」と定義します。それ以外の主張って取るに足らないと思うんだけど、何かあったっけね。大体はこの「新卒一括採用許せん!」っていうのに収斂するんだと思ってるんだけど。

  • 新卒一括採用という悪習

よく言われるのはなんだ?学生の本文である勉学に支障をきたす。過度のプレッシャーがどうの。職業のマッチングがうまくいかず不利益を被る。留学すると不利になるから学生が内むきになる。就活ビジネスがはびこる。他にもあるかもしれないがこんな主張が想定できると思う。一見すると悪いことばっかだよね。それぞれの問題点を抽出すると次の3つにまとめられるんじゃないかな。

    • 就職するには早すぎる

半年やそこらの就職活動で自分に合った働き口なんて決められない。(終身雇用を前提とするなら)一生の大きな部分を同一の会社で過ごすのだから、もっとじっくり考えたほうが良い。学生のうちはしっかり遊んでしっかり勉強して、卒業してから2〜3年のうちに仕事を見つけていこう。

    • 時間が限られすぎる

いくら長期化していると言っても3年の冬から夏までの半年にほとんどが集中してる。おちおち留学もできないし、見に行きたい業界もいっぱいあるのに。あと就職活動は景気に大きく左右されるし、たまたま不景気のときに学生だったからといってその後の人生が規定されるのはおかしい。既卒の受け入れにも積極的になって、世代間の不公平を是正できるようにしよう。

ついでに言うと買い手市場下での就活はマジで理不尽。企業の人事風情が偉そうな顔してるのは我慢ならないよね。非常識なお約束とかがはびこるし、学生の間でも読み合いがはじまる。そこにつけ込む就活ビジネスとかなくなればいいのに。

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ま、全部僕の思ってることなんですけど。この辺は完全に新卒一括採用の悪いところ。特に企業が通年採用してないのは迷惑だと思う。特に4月の頭は春〜夏の学会シーズンに向けた締切が連続するので正直大変だった。

  • 就活がぶっこわれたらどうなるんだろう

どうなるんだろうね。3つめに挙げた情報格差に関しては、短期的にはどうにもならないと思うけど(緩やかに是正される方向には進むかも)、それ以外は改善されるだろうね。就職するタイミングが比較的自由になるわけだ。望むだけじっくりと腰を据えて仕事について考えることができる。自分の予定に合わせて就職活動をアレンジできるようになるだろう。就活ビジネスにしても、カモであるところの学部3年(or修士1年)の学生が毎年入れ替わるところに肝があるんだと思う。カモは賢くならないけど、自分たちは毎年知見を積み上げられるから。そう考えると、新卒採用という特殊環境でしかあのエグい商売は成り立たないんじゃないかな。これって全体的に素晴らしいことじゃないか!

でも、本当に良いことだけなのかな。例えば、既卒採用が一般化すれば今で言う第二新卒的な人たちと同じ土俵で選考を受けることになるかもしれない。そうじゃなくても、卒業してからインターンシップやなんかで企業における就労経験を積んだ人は今よりも全然多くなる気がする。そしたらどうなるか。新卒で就職することがかなり難しくなるんじゃないかな。だって似たような年齢で既に社会人としてのいろはを身に付けた人が応募してくるんだもん。わざわざ新卒を採らないでしょ。

いや、日本には新卒を一から育てるっていう文化があるだろう、という指摘があるかもしれない。確かに現状はそうだ。でも、その教育コストって一括採用だったからペイしたんじゃないの?新入社員が必ず4月に入ってくるから全員に均一な教育ができた。でも、通年採用にしたらそうはいかないよね。ま、これは企業側の視点だから無視してもいいけど。

  • ぶっこわれて得する人・損する人

この間、フランス人からフランスの就職活動について聞く機会があった。フランスは日本と違って採用時期に縛りはないらしい。アメリカと同様通年採用なんだって。ちなみにイギリスは日本と同じようなことになってるみたい。

ただ、フランスでも卒業してすぐに就職する人がいるとのこと。どんな学生か。そう、一部のエリート校出身者なんだって。上でも指摘したけど新卒一括採用みたいな制度がない場合、就業経験のない学生が採用されるのはかなり困難な状況。それでも企業が欲しがる人材はごく少数の「生え抜きの幹部候補生」なんだとさ。転職が一般的な世の中でも、企業を回していくうえでプロパーの社員は不可欠だと考えられてる模様。

    • 得する人

じゃあ、就活がぶっこわれて新卒一括採用がなくなるとしよう。得をするのは誰か。恐らく、フランスとかと同様に一部の名門校出身者じゃないだろうか。今以上に入社時の教育コストが彼らに集中し、プロモーションのチャンスも増えるかもしれない。働くまでのタイムラグもなくなるから、生涯賃金も少し多くなるかもね。あんまり本質的ではないけど。もちろん、様々な事情で特定の時期に就職活動をするのが困難な人も助かるだろう。

    • 損する人

逆に、限られた新卒枠に漏れた人は相対的に不利益を被るかもしれない。卒業したはいいものの、これまでみたいに「学生時代に力をいれたこと」を喋るだけでは採用してくれなくなりそうだから。だって隣には「2年間、営業の仕事して〇〇を売ってきました」とか話せる人が普通にいるんだよ。卒業したらすぐインターンシップにでも応募して、自分に合いそうな業界を探しながら就労体験くらいしとかないとまずいかも。ただ、今は不景気だからインターンシップが無給だったりして。有給のやつには応募者が殺到しちゃったりとか。

もちろん全部想像です。あとはそのフランス人から聞いたこと。ちなみに彼はほんの上澄みの新卒採用された側の人間だったんだけど、前にHSBCってなんだよって記事でイギリスの格差社会みたいなことについても書いたの思い出して、やっぱり日本はかなり平等な社会なんだと思う。フランスにしろイギリスにしろ、ガチで階層化されてるから就職の段階で逆転なんか不可能みたいなこと聞くもの。それこそ日本なら「マーチから一流企業に行けた!俺勝ち組!」みたいな話はよくあるけどさ。

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ちなみに彼、東大とかワロスwwwレベルのエコール・ポリテクニーク出身。しかもイケメン。身長190cm。もちろん目は青い。

  • まとめ

「就活がぶっこわれると困る人たち」は誰なのか。こんなことを考えたのはもちろん「就活ぶっこわせデモ」ってのが勤労感謝の日にあったという話を聞いたから。最初、なんか違和感があったんだよね。年末のこの時期に「就活は茶番だ!」とかやってると、大方の人は「ああ、まだ内定でてないのかかわいそうに…」って反応するんじゃないかと思うんだけど(少なとも僕はそう思った)よくよく考えると不思議。わざわざデモ計画して、人集めて、剰えメディアの取材も取り付けて。明らかに行動力あるし、これでNNTだとしたら世の中がおかしい!そう感じたわけです。実際このデモには多くのANTが関わっているみたいで、やっぱなーと。

でも意地悪だよね。(恐らく)就活がぶっこわれても困らない層の人たちが、就活がぶっこわれると困る人たちを煽って「就活ぶっこわせ!」って言わせてるんだから。ちょっと穿った見方しすぎてるかな。

「就活がぶっこわれると困る人たち」、それは殆どの就活生ではなかろうか。あとは今の就活ビジネスの枠組みの中で食ってる人か。新卒一括採用って実はかなり優れもので、平均的な学生にはかなり親切設計になってると思うのね。終身雇用が崩れて、企業がどんどん非正規雇用を増やしていこうとしている時代に、使い物になるかどうかわからない学生を一気に採ってくれるわけで。このシステムがなくなったら、企業が人材について長期的な視点を持つ理由がなくなるもの。言葉は悪いけど、優秀じゃない人から順に困ったことになると思うんだ。ちなみに、後者の就活ビジネスやってる人たちは…まあ転職市場に参入するんだろうね。

  • さいごに

僕個人としては今の就活って間違ってると思うのね。就活って時間かけた者勝ちなとこあるし、それってフェアじゃないと思うから。やっぱり「就活に対する姿勢」みたいなものじゃなくて、企業が求めてる「優秀さ」を備えた人が採用されるべきでしょ?だから就活をぶっこわせデモには大賛成。どんどんぶっこわしてよ。ただ、そうなっても僕は新卒で入社するつもり。会社で大きな裁量を持って働くのに一番の近道だと思うし、その枠に滑り込む自信もある。自分に合う仕事が〜なんて悠長に言ってる暇はないというか、与えられる仕事よりは自分で創出した仕事の方が楽しいだろうっていうか。そもそも、今だって奨学金借りて学費諸々払ってるのに卒業から入社までタイムラグあるとか意味わかんないし。

ま、今の就活システムがぶっこわれたとしても、相当頑張らない限り学生にとって有利な制度にはならないだろうから、やるならしっかりとしたビジョンがないとね。問題提起しても「僕らのためになんかうまい方法考えてよ」ではダメだし。僕はもう半年足らずで社会人になってしまうけど、陰ながら応援しております。もし第二新卒で転職しようと思ったとき、まわりが「自分に合う仕事」を探してる最中の既卒ばっかりだったら楽勝だしね。っていうのは嘘ですけど。

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