工学部ヒラノ教授

最近読んだ本なんだけど、ちょっと大学院のこととか思い出して非常に楽しい時間を過ごさせてもらったので紹介します。

工学部ヒラノ教授

工学部ヒラノ教授

大学設置基準大綱、大学院重点化、独立法人への道―朝令暮改文科省に翻弄され、会議と書類の山に埋もれながらも、講義という決闘に挑み、研究費と優秀な学生獲得に腐心する日々。大学出世スゴロクを上がるべく、平社員ならぬ平教授は今日も奮闘す。筑波大、東工大、中央大の教壇から見た、工学部実録秘話。

このブログでも何度か書いてきましたが、大学の先生って本当に雑務に追われているんですよね。東大時代の先生なんて、それこそ結構偉い人だったので、自分自身ではほとんど研究なんて出来てなかったはずです。代わりに優秀な研究員を雇いまくって鬼のように論文量産してたんだけどね。いや〜持てるものは実績も名誉もどちらも掴むんだよな。
てな話は置いといて、とりあえず「工学部ヒラノ教授」です。随所に現大学院生が気に留めておくべき言葉が散りばめられています。元大学院生には既視感とともに涙が出るほど「納得!」な話ばかりです。例えばね
”工学部教授は若者たちに強制的に自分の話を聞かせることができるうえに、彼らのエネルギーを吸収して業績を稼ぐことができる”
”家では妻や子供たちに疎外されていても、大学に出てくれば、優秀で愛すべき学生との素敵な時間が待っている。工学部教授の多くが、朝早くから夜遅くまで大学に張り付いているのは、家にいるより大学の方が楽しいからである”
もうね、一章だけでもこれだけ実感のこもったお言葉が。学生の側としても迷惑のような感謝のような、何とも言えない感覚を教授に抱いているわけですが、どうやら向こうも同じような思いだったようですね。ま、僕みたいなのがこんなこと書いたら笑われてしまいますけども、とにかくこの本が面白いのには変わりがない。
一方で、このところ続いていた大学改革の評価についても当事者としての見解が豊富に書かれております。なぜ「総合政策」学部みたいな漢字四文字学部が量産されたのかとか(別にSFCをdisってるわけじゃないですけど)も分かるし、博士課程に進学してからの行く先についても語られます。科研費を取るための裏技もなかなか面白く読みました。大学に、特に工学系の修士課程以上に在籍していたことのある人なら是非とも手にとってみるべきですよ!ロンダを試みようという人にもおすすめします。これ、いいです。作者の今野浩、研究者としても優秀な方のようですが、文章も読みやすく何より実体験をもとにしているからリアリティがある。ほかにもシリーズの著作があるようなので今度図書館で借りてみようかしらん。

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