はじめての学会発表



  • ロンダ 2012/01/02 21:48

連投申し訳ないです。よければ旧帝レベルの大学院の学会についても教えていただきたいです。学会はやはりかなり回数があるのでしょうか?国際学会には出ないといけないでしょうか?学会について体験談なども教えてくただけるとありがたいです。何度も質問すいません

長いこと放置してしまったので勢いで答えていきます。院生に宿命づけられた学会発表に関する質問ですね。

  • 学会ってなんぞや

wikipediaによると「学会(がっかい)は、学問や研究の従事者らが、自己の研究成果を公開発表し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場である。また同時に、査読、研究発表会、講演会、学会誌、学術論文誌などの研究成果の発表の場を提供する業務や、研究者同士の交流などの役目も果たす機関でもある。」とのこと。創価学会じゃないよ。

ロンダさんの質問は"研究発表会"にあたるのかなと思います。僕も参加しましたし、ブログにも時々書いていたかと思います。

  • 院生にとっての学会

修士の学生が言う「学会に行かなくちゃいけなくてダルい」というのは、例えば「社団法人日本〇〇学会の主催する□□分科会のシンポジウムで20分の発表をしなくてはいけない。締切までに成果をでっち上げてパワポを作らなきゃいけないばかりか、ゼミでは発表練習しなきゃいけない。しかも本番は10分の質疑応答があるから、他大のめんどくさい先生に絡まれたら死ぬ。大学のお金で旅行できるのが唯一の救いだけど、最終日に発表だからソワソワしてたいして観光もできなさそう。やっぱダルい」ということになります。

ただ、この学会への参加は分野や研究室によってかなり姿勢が違います。友人にはM2の今の時期まで一度も学会に参加したことのない奴もいますし、何度も国際学会に送り込まれている奴もいます。いろいろです。

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こちらは日本物理学会の年次大会の様子。だいたいこんなかんじでやってます。

  • 学会のイメージ

ロンダさんは情報系とのことですので、そのあたりを勘案しながらお話しましょう。まず、情報系で一番大きな学会は情報処理学会ではないかと思います。正会員18,679名、学生会員2,374名だそうです。また、電気学会も情報系の研究を受け入れている(というかほぼなんでもありの学会です)のですが、会員数は約24,000人とのこと。会員はほとんどが大学の先生やその周辺のアカポスについている人だと思います。情報系は比較的企業の方々も多いのではないでしょうか。

学会といってもいろいろなレベルのものがあります。全国大会などと呼ばれるような大規模なものから、一部の分野(情報系の中でもソフトウェア工学とか)だけででやる部門会・ジンポジウムなどまで。発表件数も数千のオーダーから数十まであります。先ほど会員数を載せましたが、発表は会員でなくても可能です。修士の学生の場合、教授が所属する学会で発表しますが、必ずしも自分が会員であるとは限りません。

また、ロンダさんは「旧帝レベルの大学院の学会」と書いていますが、そのようなくくりはないですね。例えば情報系では国立大学の存在感が大きいようで、早慶などよりも名工大九工大jaistnaistのほうがよっぽど発表に参加していると聞きます。土木系は伝統的に旧帝や早稲田が強いのですが、それ以上に日大の名前が非常に強いようですよ。

  • 学会の体験談

うちの研究室では修士の間に必ず1回の発表が義務付けられています。明文化されていませんがマストです。僕の場合、というか僕の学年は結構みんな真面目だったので、平均して3回ほど学会に参加しています。僕は国内4件・海外1件の計5件です。ええ、自慢です。

それでは、それぞれの体験談を少し。

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国際学会のポスターセッション。修士はポスター発表やらされることも多いよね。

    • 国際学会の場合

これはもう地獄です。想像したとおりです。僕はTOEICはある程度得点できますが、もちろん英語はしゃべれません。その努力もしていません。結局どうなるか。発表の原稿(カンペともいう)を完全に作り込み、ひたすら練習を積みます。もちろん想定質問もつくります。30通りくらいつくります。そして、追撃(追加の質問)をシャットアウトするような完璧な回答を用意します。幸運にも僕が師事している助手さんは海外で研究活動に従事していたこともある方で、語学の方に関してはいくらでもアドバイスをくれます。その方のおかげで乗り越えられたと言っても過言ではありません。

いざ現地に到着すると、とりあえず胃が痛みます。発表前日は大勢の外人の前でアウアウする自分の姿が頭に浮かび一晩中まんじりともしません。しかし、いざ発表が始まるそうでもありません。何度も練習したので発表はなんとか。手元には原稿もあるので頭が真っ白になっても大丈夫ですし。続いて質疑応答の時間ですが、難しい単語以外は聞き取れます。半分くらいは想定質問の中にあるので安心です。とりあえず、yes/noで答えるべき質問には簡潔に答えるよう頑張ります。ただ、難解だったりものすごく素朴な質問があったりすると速攻テンパります。仕方ないので緊急脱出をこころみます。"It is future work!"これで空気の読める先生は質問を諦めてくれます。

振り返ると散々な結果ですが、修士だし、日本人だし。とりあえず一流の研究者の発表が聴けるのは良い経験ですね。半分は何言ってるかわかりませんが、Hotなドメインがなんとなくつかめます。また、海外だけあって観光もなかなか楽しいです。発表が会期の前半であれば、セッションやレセプションをサボって街に繰り出します。円高万歳です。

    • 国内学会の場合

自分が発表しないものも含めて飽きるほど行きました。聴衆が全員日本人なのに英語での発表を強要されるような意味不明の学会もありますが、概ね平和です。ゼミなどで使ったスライドを流用し、サクっと発表資料をつくります。何度か口に出して読み調整を加えるともう完成。

本番の会場に行くと、いつもの通り20〜30人くらいの人が待機しています。半分以上は発表者かその関係者です。既に何度も発表を聞いたことがある人ばかりで新鮮味はありませんが、そのぶん突っ込んだ質問が飛び交います。相手のバックグランドをよく知っているからです。僕の発表に対しても同様で、うちの研究室がどんな研究をやっているか周知の事実ですからあんまり適当なことを答えるわけにはいきません。国際学会の時とは別の意味で必死こいて考えます。意地の悪い質問や、急所を付くようなものに関しては「今後の課題です」と答えます。限りなく降参に近いディフェンスです。

発表が終わると夜の街に繰り出します。いたるところに学会参加者がいて、先生たちは楽しそうにお話しています。学生は居心地の悪い思いをしたりしますが、しばらくすると他大同士の研究室間で仲良くなったりします。先生のいないところで愚痴を言い合ったりします。そして意気投合した者同士、翌日のセッションを抜け出し観光する算段をします。

  • さいごに

ダラダラ書いてしましましたが、まとめていきます。学会は5〜6月にかけてと秋、そして2〜3月の3シーズンくらいあるように思います。学会は玉石混合、星の数ほどあります。研究室によって参加する学会は違いますし、そもそも発表を重視するかどうかも先生によって違います。ただ、M2になって成果が上がってくると1〜2回くらいは発表する機会があるんじゃないでしょうか。最先端の研究をしていれば当然国際学会もありえますが、基本的には国内だと思っていていいんじゃないでしょうか。

大変ですが、とても面白い経験だと思います。せっかく理系の大学員に進むつもりなら積極的に手を挙げてもいいんじゃないかなと思いますよ。

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