東大院生の就活記(俺の場合)



mugyuuと申します。かっぱ巻きRCさんから依頼を頂きましたので、ひとつ「東大院生の就活」について書いてみたいと思います。僕に期待されているのは

    • 大学院から東大に移ったロンダ生にとって、就職活動とはどんなものなのか
    • 工学系に所属しながら半ば文系就職のような振る舞いをしたのは何故か

といった疑問に答えることだと思っているので、そのあたりを念頭に置きつつ話を進めていければと考えています。

  • 【自己紹介】

工学系研究科の某専攻に所属しています。学部は別の国立大学ですが、その頃から継続している研究内容で修士論文を書くため鋭意実験中の身です。就職活動はM1の夏頃に意識するようになり、秋になってから本格的に行動を開始しました。冬学期中は主に外資系コンサルなど、春休みからは(一般的に大手と呼ばれるような)企業群を受けGWには今の内定先に入社を決めました。全部で30社くらいは受けたと思いますが全て自由応募です。

  • 【就活をはじめたきっかけ】

文章の構成力にはあまり自信がないので、とりあえず時系列で書いていこうと思います。ご容赦ください。はじめに、僕が就職活動を意識するようになった時期についてです。これは就活ブログを立ち上げた日にほぼ一致するのですが、夏学期も終わりに近づいた7月の最終週でした。講義で仲良くなった友達が外資系企業のインターンに参加すると聞いて「ああ、とうとう僕にも就職活動というやつをやらなければいけない順番が回ってきてしまったのだなあ」と思ったのです。ブログの最初の更新にはこんなことを書いていました。


就活をはじめようと思ってインターンにエントリーしたけど、どこかで聞いた「就活って情報戦だよ〜」って言葉。……あれはホントだね。ES締め切り、面接、インターンの日程、もうカオスだわ。ってことで日記にして記しておこう計画を今日から実行します。就活した日はなるべく毎日更新を心がけるつもりです。たぶん無理ですが。(中略)あとは…研究室のこともちょっと書いておこうと思う。院生の生活の中心はやっぱり研究室だしね。

就活と院試と研究室 2010/7/27の日記より

振り返って記事を書いた時の自分のメンテリティを解説すると、まずはロンダという負い目(引け目)を指摘することができます。研究室に配属されてから4ヶ月も経っていない状態で就活を始めることで「結局就職目当てかよ」という視線に晒されることを恐れたわけですね。僕はかなりの"ええかっこしい"なので、例え就活への焦りがあったとしても院生として研究をおざなりにすることは考えられませんでした。僕をとってくれた先生にも申し訳ないと思ったし。実際博士課程への進学も捨てきれなかったので、言い訳がましく最後の一文を付け加えたんだと思います。ただ、この考え方というか優先順位の付け方は就活を通して変わらなかったところですね。予定もできる限り研究室第一で組みましたし週に4・5回は必ず顔を出すようにしました。特に今年は震災の影響で選考時期が分散していたため、一番キツい期でもこのへんの自分の中での約束は守れたと思っています。

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こーゆーの面白いよね。潔い。

  • 外資系コンサル冬の陣】

続いて、僕が受けた企業の半数を占める外資系コンサルの話に移ります。最終的にインフラというコテコテのドメスティックな会社で働くことを決めた僕が、何故こんな格好良さげな企業を受けていたのか。端的に言えば、就活には勝ち負けがあると思っていたからです。大学受験で言うところの難易度のランキングのようなものを想像していただければ分かりやすいのですが、就活を始めたばかりの僕にとっては、入社しにくい(そして大抵の場合は世間体の良い)企業に内定することがとりあえずの目標になっていました。先ほど就活をはじめた動機について「順番が回ってきた」と書きましたが、働くことに対するビジョンが欠落したモラトリアム青年たる僕にとって所謂2chの"就職偏差値"というのは格好のベンチマークだったわけです。

さて、肝心の選考の模様についても少し書いておきましょう。"就職偏差値"で言えば外資系の投資銀行と並び難関であるとされるコンサル業界ですが、実際びっくりするような倍率です。数千人の応募に対しひと桁の内定者しか出さない企業もざらですし、書類選考に通過した時点で周囲はほぼ東大・慶応・一橋で占められていたりします。就活界隈では「意識の高い学生」などと揶揄される彼らに共通するのはその圧倒的自信。僕もたいがい自信家ですが、GD(グループディスカッション)ではその自己主張の強さに思わず引いてしまうことも。しかし、そんな彼らをも唖然とさせてしまうのがコンサルの選考なのです。思い出深いのは某社のGD、1時間程度の選考のあとで30人程度の学生がひとつの会議室に集められました。周りはもちろん超有名大学の学生のみ。そこへひとりの社員が入ってきて「これからお呼びする方はお集まり下さい」と。そして5人ほど名前を呼んだ後、こう言い放ったのです。

「後の方は本日の選考は以上です。結果は後日ご連絡します」

まさにエグいの一言。面と向かって落選が告げられます。ここまで非情である必要があるのかはわからないけど選考は終始こんな雰囲気。これを読んで闘争心が湧いてきたあなた、コンサルは天職かもしれませんよ?

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お金だって、ほらこんなに!クビにならなきゃだけどね。

  • 【春先の大手病】

年が明ける頃には順次大手企業の説明会が開催されていきます。それまで就活に「勝つ」ことを考えていた僕は方向転換を余儀なくされました。コンサルからは内定をもらっていたものの、選考の過程で自分にはあっていないように思え、それは就活における目標の喪失を意味していました。さてどうしたものか。就活本番の4月までにある程度受ける企業を絞らないとまずいらしいのです。人生の一大事であるだけに悩みましたし、一番辛い時期だったかもしれないですね。結果から言うと、この「どうしたらいいかわかんね」という状態は現在に至るまで絶賛継続中なんですが、自分の未来にはじめて危機感を抱いた出来事だったように思います。

どの企業が自分に合うのかわからない。しかし時間にも制約はある。こんなありふれたトレードオフに直面した末、自由応募で興味のある業界の上から数社ずつを受けていくという戦略を取りました。もうお分かりいただけたでしょう、僕はミーハーなんです。要は就活界隈で「大手病」と蔑まれている病に罹ってしまったのです。しかし、多少の言い訳をお許しいただけるでしょうか。世間で東大院生と言ったら大変なエリート、それは誰もが認める所です。そしてその"エリート"たる東大生は、聞いたことのない企業に就職することを想定されていませんし、至るところでプレッシャーを感じることになります。よほどの覚悟がない限りこの「大手病」から逃れられないのではないでしょうか。僕の場合も例外ではなく、ひとつの典型的症例として捉えて頂ければと思います。

自分の未来はもっと主体的に選択すべきだ、という声が聞こえてきそうですね。御説ごもっとも。しかし考えてもみてください。「東大院生」という肩書きはほとんど最強で、選考のずっと前からリクルーターがついたり限定の説明会が開催されたり。いざ面接が始まっても、最初から一定の優秀さが担保されていることほど楽なものはありません。知らずのうちに気が大きくなってしまうのを、あなたは止めることができるでしょうか?

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大手行きたい大手行きたい大手行きたい…みんなそうでしょ?

  • 【おわりに】

とりとめもなく書いてきましたが、ここでとりあえずのまとめとします。自分自身の就活を振り返ってみると、複数内定を貰いその中から入社する企業を決めることができたというのは、かなり恵まれた状況であったなと思っています。就活に点数を付けるとすれば80点、概ね満足です。僕はどちらかと言えば就活に批判的で心の中では常に「こんな茶番に付き合ってられるか!」と斜に構えていました。それは今でも変わりませんが、自分自身に責任を持つという意味ではもっとこの祭りに乗っかっても良かったのかなと考えたりしています。不足の20点はこの後悔の分ですかね。

最後に、誠に僭越ではありますがまだ見ぬ後輩院生にアドバイスをば。まず、忙しくても研究室にはちゃんと来てね。就活で休んでばかりだとゼミの雰囲気が険悪になって周囲に迷惑をかけます。ホント頼みます。それと、東大は最強です。でも最強なのは学生個人ではなくて大学の歴史やそれを作り上げてきた先人です。まだ世の中の何たるかを知らない僕達は全然最強ではないのです。そこを勘違いしなければきっと上手く行く。だってあなたは東大生なんだから。

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去年の駒場祭で「東大院生情報統合思念体」というサークルに寄せた原稿です。うーん、なんか気持ち悪いけど、概ね僕の思ったことが書かれていますね。

http://blog.with2.net/link.php?1090012

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